村みんなが家族ってこういうこと 


船から。せまってきたサバイイ島。




   ●やったあ!サバイイ島へ!●

  実は私の当初の目的は、フェアばあちゃんのサルワファタ村のあるこのウポル島の隣にある、サバイイ島だった。サバイイ島には、伝統のポリネシアの暮らしが色濃く残ってる、と聞いていたからだ。

  で、フェアばあちゃんの一家の親戚がサバイイ島に住んでいる、というので、「お世話になれないかお願いしてみて」と言ってあった。 そしてようやく、フェアばあちゃんの家に来て1ヶ月近く経ったある日。サバイイ島からお迎えが来た。どうやら新しいところへ客人を受け入れる時、迎えに来てくれるのはサモアの伝統のようだった。
 その人は、デーンと、やっぱりポリネシア体型のおっきな姉ちゃん。マセリナ。フェアばあちゃんのまたいとこの娘。(とかなんとか。血縁が遠くて覚えられなかった。でもサモアではそれはりっぱな「ファミリー」。) 
 このマセリナの家に、以後暮らすことになる。 

     ●溶け合って生きちゃう●

  バス、船、バス、と美しい海と森の中を乗りついで、来ました!ガウターバイ村、マセリナの家。
 マセリナのダンナは出稼ぎでこの国にはいない。マセリナの子供二人、それにマセリナの兄夫婦と子供5人、計10人がこの日から私と夢さんの家族になった。 …と、思っていたが…!!

 着いたその日、お隣のシーリアおばさんが歓迎に鶏の石焼を一匹持ってきた。それをこの家の10人とそこに居合わせた村人がむさぼり食った。普段めったに摂らない動物性タンパク源。客人の歓迎のしきたりである鶏の丸焼きは格好の機会なのだ。そして私は、しきたりに従ってお礼をこっそりシーリアに渡す。(※お礼とは…昔は食料だったが今は田舎の人にとって一番必要で嬉しいのは現金となってる。町から来た人間はお金を持ってるので、鶏一匹に20タラ−800円ーくらい。町と村でのギブアンドテイクがこういう形で習慣化された。)
  そしてシーリアやその娘のファアガロとその小さい子供たち、近所のトエおばさん、イスタ姉ちゃん…これらの人は以後、私が昼寝していても遠慮なく家にあがって来てくっちゃべり、食べ物をなんでも分け合うことになる。私が村の人々の家の前を通りかかっても、中で寝っころがってる人々は「よお、メシ食べてくかぁ?」と必ず聞いてくる。なにせ家には壁がない。四方どっからでも丸見え。「よっこいしょ、チョイトあがるよ。」の落語のノリが四方から来る。

 村でひとつの小さな雑貨屋で、どんぶりのご飯を食べながら店番してたおネエさんも、客が来ると自分の食べてるそのどんぶりを「食べる?」と客に差し出す。
バスで隣り合った女の子がインスタントラーメンを袋からバリバリとかじっていた。その子はその袋を私に「ほい、食べなよ」と差し出す。
 いろんな人に、日々そうやって食べ物をもらった。それがここでは習慣なんだと分かってからは、私もその時食べてるものを通りがかるいろんな人に分けた。

  ここでのナツの最後の日には、この家の家族へのお礼にと、トラックをチャーターしてピクニックを企画した。そのトラックには、気がつけば近所の色んな人々がぎゅうぎゅうづめに乗っていた。

  そうなんです。どうも、日本での「家族」の感覚をここに持ち込んで考えること自体、かなり違うようだ。血縁を単位とした、ひとつの家に暮らすグループを「家族」として囲う風習が、じつは資本主義の発端、とは読んだことがある。「家族」という壁をつくることで、財産をその壁の内側に蓄えることができるからだ。けれど資本主義は長い数万年の人類の歴史から見るとほんの最近のここ数千年、しかも先進国の体系。


船で。マセリナと夢さん。


バスから。マセリナの家はもうすぐそこ。(牛もいるぞー)




↑こっちが台所兼食堂。 ↑こっちが居間兼寝室。


さっそく食堂でタロと青バナナのココナツ煮を。
 

壁がないとはこういう感じ。
寝っころがってても海が見える。

 ずっと長い間、人間は食料や財産を家族単位で保管するという習慣がなかった。ただただ、そこにあるものはそこに居るみぃ〜んなで分け合って、残ればみんなで保管する。そうやってみんなが生きれるようにする。シンプルにそうやってきた。

  そしてこの地球上、ごく一部のいはゆる先進国といわれてる所以外では、今もほとんどのところでみんなそうやって生きているんだ。理屈ではわかっていても、そのシンプルな感覚に私は毎日体でびっくりすることになる。



 

サバイイ島2
鶏は家の中、子供は扇風機役
 サモアってどこ?


         ★=現在地

             1歳の赤ん坊と日本を脱出するまで



 
1 初めての人の輪も濃い!

 フェアばあちゃんの「超簡単子育て」

3 海辺で(餅つきでなく)

  サモアン・ココアつき

4 「友情とお金は切り離せない」?!


5 知らない人の膝に乗るのが

  サモアのバス

6 同じ空間、
  子供の世界と大人の世界

1 村みんなが「家族」ってこういうこと

2 鶏は家の中、子供は扇風機役

3 川での行水にはコツがある

4 ー海ー 魂の源

5 夢さんは村の子になっちゃった…

6 働き者は損をする…?

7 交通事故のブタは石焼に!

8 200人を家で接待、これ普通。

9 母親である前に人間だから

10 ヒョイ!の眉あげあいさつ

                 大切なあとがき

体験 体験 体験
うっま〜い石焼、
「ウム」料理
チャチャっと編む
ヤシの葉のかご
木の皮の布、
「シアポー」づくり

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