フェアばあちゃんの
    「超簡単・子育て」


●初めて世話になるサモア人の家●

  フェアばあちゃんの家で知った、一番シンプルなサモアの夕食は、たろいものココナツミルク煮。サモア語で「ファアリフ・タロ」という。日本での缶詰のココナツミルクを想像するなかれ。がぁこがぁことココナツをすって絞る生きたココナツミルクは、もぉ感動の味!私も毎日がぁこがぁことトライしたが、ものすごう力がいる。あぁ、しんどかった…。 
  ところでフェアばあちゃんは働き者。朝から晩まで家の周りのことをして、あまりしゃべらない。昔かたぎのイカツイばあちゃん。100人以上の孫やひ孫はアメリカやオーストラリア育ちで、ばあちゃんも英語は分かるが決してしゃべらない。英語で話してもサモア語で返ってくる。これは語学特訓になった。
 で、この恐いばあちゃん、私がココナツミルク大好きとみるや、毎晩、なべ底にたまったこってりココナツミルクを、私のタロイモの皿にたら〜っと開けてくれた。…恐い顔のまんま。

●夢さん、退場させられる!●

  夢さんは、サモアでは「ミティ」と呼ばれた。「夢」のサモア語が「ミティ」なのだ。そのミティ、ある夕食時、機嫌が悪くて癇癪を起こしてギャーギャー泣き出した。この人、泣き出したら止まらない。日本では私も手を焼いていた。すると突然フェアばあちゃん、ミティに一喝。「ミティ!アルエファフォ!(サモア語で「外に出なさい!」)」ミティは力づくで退場させられる。あっけにとられるのは母親の私。
  


ココナツの葉でほうきを作るフェアばあちゃん。夢さんはいつもその周りで遊ぶ。


ココサモア(ココア)をつくフェアばあちゃん

 日本の育児界では「子供の声を聞こう」という子供の人権尊重の見直しが始まった昨今。でもその人権とは何かの理解の混乱の中で、とりあえず単なる我がままに優しくして、かえって親が小さなことで振り回されるケースが実は多い(と思う)。私もその例外じゃなかった。

 ミティは、気の済むまで外で泣き叫んだ後、泣き止んだら家の中に入ってごはんを食べた。ところがこの「退場」処置をつらぬくうちに、ミティ…夢さんは些細なことでは駄々っ子泣きをしなくなった。

●「子育てはファイゴフィエ(簡単)!」●

  このフェアばあちゃん、実はこの「ピシッっと子育て」でなんと10人の子供を育ててる。みんなアメリカ本土やハワイで会社を経営したりして、けっこうな仕送りをばあちゃんにかかさない。里帰りしてたその何人かと友達になったが、びっくりするくらいオープンでいい人達だった。これは説得力があった!
 日本の今の育児界であまり見ない、堂々とした例をまのあたりにした。フェアばあちゃんはこう言った。 「どんなに小さな子供が居る時でも、子供は好きに遊ばせておいて私は変わらず家の周りの仕事をした。わがままは相手にしない。それだけだよ。」そして笑って、でも力を込めてひとこと。「子育ては、ファイゴフィエ!」(サモア語で「簡単!」)
 日本の母親にとっての大きなテーマに、なんとあっさりと言い切るか。脱帽…、でした。



 

サルワファタ村3
海辺で(餅つきでなく)サモアン・ココアつき
 サモアってどこ?


         ★=現在地

             1歳の赤ん坊と日本を脱出するまで



 
1 初めての人の輪も濃い!

 フェアばあちゃんの「超簡単子育て」

3 海辺で(餅つきでなく)
  サモアン・ココアつき

4 「友情とお金は切り離せない」?!

5 知らない人の膝に乗るのが
  サモアのバス

6 同じ空間、
  子供の世界と大人の世界
1 村みんなが「家族」ってこういうこと

2 鶏は家の中、子供は扇風機役

3 川での行水にはコツがある

4 ー海ー 魂の源

5 夢さんは村の子になっちゃった…

6 働き者は損をする…?

7 交通事故のブタは石焼に!

8 200人を家で接待、これ普通。

9 母親である前に人間だから

10 ヒョイ!の眉あげあいさつ

                 大切なあとがき

体験 体験 体験
うっま〜い石焼、
「ウム」料理
チャチャっと編む
ヤシの葉のかご
木の皮の布、
「シアポー」づくり

     ● サモアってどこ? ●
    ●作者「ナツ」について
     ●  リンク集  ●