海辺で(餅つきでなく)
     サモアン・ココアつき



 


がぁらがぁら、と炒る。
 ●炒り●

 「ココ・サモア」。これはサモアのココアのこと。毎日の食事時にもお客にも常にでる。「毎日のお茶」が、ここではココアなのだ。
ココ・サモアは、カカオ豆を太陽の下で干すところから始まる。フェアばあちゃんとお隣のミタイおばさんは今日も海辺でココ・サモアづくり。そしてもちろん私も参加する。

まず、ココナツの殻に火をつけて、カカオ豆をのんびりと炒る。海辺に落ちてる棒切れを拾って、それで豆をかき混ぜ続けるのだ。
がぁら。がぁら。ふつふつと、こおばしいカカオの香りが立ち始める。真っ黒に入れたら炒りはOK。

  


皮むき。あ、こらアンチョ(お隣の子)、つまみ食い!

●皮むき●

 次に熱い豆の皮を、むいていく。
ひとつづつ。
あちち、パリ、ぺリリ。ピーナツの薄皮のようにむく。ただ、これは手がすすで真っ黒になる。

ざざぁーん、ざざぁーん。
波の音をすぐ後ろに、パリ、ぺリリ。

フェアばあちゃんとミタイおばさんが何やらサモア語でのんびりとくっちゃべってる。これも私には分からないので、ここちよい音楽なのだ。


タアヌアにむけた豆を入れる。

●豆つき●

 さて、むけた豆は、タアヌアという小さな木の臼にいれて、つけもの石のような重い石でついていく。

どん。どん。どん。どん。どん。どん。

ミタイがつく。

カカオ豆が砕かれていくと、甘い生き生きとしたココアの香りが充満してくる。

ふうあぁ。


ひたすら、ひたすら、ついていく。これはミタイおばさん。

新鮮な香りが、海辺いっぱいに踊っていくようだ。

フェアばあちゃんがかわる。
どん。どん。どん。どん。どん。どん。
 
私がつく。
どん。どん。どん。どん。どん。どん。

このゆっくりとした力仕事は、いつも数人の力を要する。
ココサモアは、一人ではできないのだ。 


とろぉ〜り。

●得もいわれぬ香り●

そして、カカオ豆は粉となり、やがてねっとりとしたクリームにこなれていく。
クリームがつやつやと油分で輝きだすと、出来上がり。
この時のふつふつとしたカカオの香りは、もう、たとえようもなく生命力にあふれている。

 


夢さんとアンチョは香りに寄ってくる。

●これはメディテーション業だ…●

 こんな日常作業の中の、リアルでかつ限りなく優しい音や香りから、人は日々の生きるエネルギーを摂取してきたんじゃないか。私の体はそんな風に思考した。この、音楽と香りに包まれる、ゆうるり、ゆうるりとしたひととき…ー海辺のココサモアづくりーがたまらなく好きだった。

 毎日、熱いお湯にとけて、ふくふくと湯気をたてるこの新鮮な香りのココア。−ゴクリ、と飲んでは、生きている実感に体がほっこりと溶けた。



 

サルワファタ村4
「友情とお金は切り離せない」?!
 サモアってどこ?


         ★=現在地

             1歳の赤ん坊と日本を脱出するまで



 
1 初めての人の輪も濃い!

 フェアばあちゃんの「超簡単子育て」

3 海辺で(餅つきでなく)

  サモアン・ココアつき

4 「友情とお金は切り離せない」?!

5 知らない人の膝に乗るのが
  サモアのバス

6 同じ空間、
  子供の世界と大人の世界
1 村みんなが「家族」ってこういうこと

2 鶏は家の中、子供は扇風機役

3 川での行水にはコツがある

4 ー海ー 魂の源

5 夢さんは村の子になっちゃった…

6 働き者は損をする…?

7 交通事故のブタは石焼に!

8 200人を家で接待、これ普通。

9 母親である前に人間だから

10 ヒョイ!の眉あげあいさつ

                 大切なあとがき

体験 体験 体験
うっま〜い石焼、
「ウム」料理
チャチャっと編む
ヤシの葉のかご
木の皮の布、
「シアポー」づくり

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