知らない人の膝に
   乗るのがサモアのバス

  私は週に一回、メールや買い物などでアピアの町に出かけた。道で「おーい!」と手を振ればバスは止まってくれる。 
 
  バスの中は時々混む。混みだすと、人が人の膝の上に座る。まず通学の子供達を、誰もが自然に引っ張って自分の膝の上に導く。子供が落ちないよう腕に抱いてガードする。知らない子供をみんなが当たり前に腕に抱く光景は、なんだかほっとする。そして大人も、互いに目配せをしては膝の上に折り重なりあって、乗ってくる人に入り口付近の席をあける。

●客もせっせと働く!●

  バスの乗客はダンボールや米袋なんかの大荷物を持ってることが多い。市場に農作物を売りに来たり、町で買い出しをしてきたり。
 入り口付近が荷物置き場。入り口付近の男は、バスが止まるたび、他人の荷物の上げ降ろしをしている。
 はじめ私はそういう男たちを車掌かと思っていた。だってあんまりよくせっせと働くんだもん。ところが。ある村に着くとその男も運賃を払ってさっと降りて村に消えて行った。ありゃま、ただの乗客だったんだ。
 たまたま入り口付近に乗ると、荷物の上げ降ろしの他にも、混んでいて運転手に手が届かない降り客の手から小銭を受け取り運転手に回し…なんてこともして、大忙しなのだ。


サモアの国に1件だけのマクドナルド。庶民には高嶺の花。その前を通ってるのがバス。

    
●しまった!お、重い!●

私は運転手の近くに座ってせまってくる風景を見るのが大好きだったので、そのうち私も荷物の上げ降ろしや運賃の仲介をするようになった。よく人の膝の上にも座った。

 ある日、例のごとく混んできて、私は、乗ってきた女の人に目くばせして自分の膝をポンとたたいてみせた。サモア暮らしをきどりたかったのです!ところが乗っかられて気がついた。この人、典型的サモア体格のどっしり姉ちゃん。70kgはあろうか…。「シマッタ…!」でも遅い。10分、20分…じんじん…私の膝は、痛いを通り越して麻痺してきた。「ユー、オーケー?」と聞く姉ちゃん。重たいと言っては失礼だ。「Yes...」と苦笑い。でもたらぁ〜っと冷や汗。その姉ちゃんが降りていった時、両足は全く感覚がなかった。まずい!もうすぐサルワファタ村、降りなくちゃ!でも立てんぞ!私は一生懸命足をもんであわてた。必死でヨタヨタ、なんとか降りたその場で、ダアーっと全身から汗が出た。
 

 ●バスの中は運転手の部屋●

 各バスで運転手は決まっている。だからバスの内装は、運転手の好き好きでそれぞれに、ラスタのバナーやハデハデステッカー。BGMは、大音量の、ビリビリに音割れしたレゲエやヒップホップ。私は窓からの海の風に不思議と似合うその雑音だらけのレゲエが、人間っぽくてとても好きになった。この雑多なバスの空間が、大好きになった。
 もしあなたがサモアに行ったら、バスに乗ってください。虫食いの硬い木の座席で、乗ってくる子供を膝に抱いて、木枠の窓にひじをつき、ビリビリのレゲエを聴きいてください。開けっ放しの(ガラスなんてもちろんない)窓から、、いろんな村の風を浴びてください。そのバスはいつも、真っ青な海と深い緑のヤシの森のあいだを、ガアーンン!!とつっきっていくのです。




 

サルワファタ村6
同じ空間、子供の世界と大人の世界
 サモアってどこ?


         ★=現在地

             1歳の赤ん坊と日本を脱出するまで



 
1 初めての人の輪も濃い!

 フェアばあちゃんの「超簡単子育て」

3 海辺で(餅つきでなく)

  サモアン・ココアつき

4 「友情とお金は切り離せない」?!


5 知らない人の膝に乗るのが

  サモアのバス

6 同じ空間、
  子供の世界と大人の世界
1 村みんなが「家族」ってこういうこと

2 鶏は家の中、子供は扇風機役

3 川での行水にはコツがある

4 ー海ー 魂の源

5 夢さんは村の子になっちゃった…

6 働き者は損をする…?

7 交通事故のブタは石焼に!

8 200人を家で接待、これ普通。

9 母親である前に人間だから

10 ヒョイ!の眉あげあいさつ

                 大切なあとがき

体験 体験 体験
うっま〜い石焼、
「ウム」料理
チャチャっと編む
ヤシの葉のかご
木の皮の布、
「シアポー」づくり

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