交通事故のブタは石焼に!
 日常的にはそれほど肉を食べない田舎のサモア人。村の外から客が来たときに出す鶏の石焼を、ここぞ!とばかりにみんなでむさぼる。そして、冠婚葬祭(サモア語で「ファアラベラベ」)の時だけ、その辺に放し飼いにしてある豚が石焼にされる。豚は大ごちそうなのだ!

 ところがある日。なんにもファアラベラベはないけど、この家の豚がトラックにひかれて死んだ。「じゃあ、まぁ、せっかく死んじゃったんだから」ということで、華々しく石焼に供することになった。



ココナツの絞りかすなど残飯で勝手に育ってくれるプタさん達。ブヒブヒ。
あれぇ〜…ドーン!


まず熱湯をかけて、毛をジョリジョリ。

ザックザックと切り裂く。
肉を食べるとは、こういうこと。

 火をつけ、石を焼いて、みんなで用意にとりかかる。アトニウが、ブタさんのからだを見事なすばやさで切り裂いていく。助手は10歳のサネレ。血が滴る光景を、1歳の夢さんも息をのんでじいっと見つめた。
 
 むごたらしい、と言うなかれ。私達が日頃スーパーで買うパックのお肉も、このように切り裂かれた同じ身体だ。ただ、私達の買うそれは、私達の見えないところで知らない人が切り裂いた。見ていない私達には、パックの中のそれは「パックの中のそれ」以外の命としては実感できない。そうして、「命を切り刻み、その生々しいエネルギーを食すのだ」というリアルな波動は失われる。
 私達は自分でその命に手をかけることをせず、いわばお金で人にそれを代行してもらって、きれいな手で食べ続けるのだ。いいとか悪いとかじゃない。そういう現実がある。
 そして、この村では、意気揚々とみんなで一匹の豚を裂いていく。そういう現実がある。
その二世界を目の前にすることが不思議で面白い。便利さという角度からの極端な違い。そして、日常に脈打つ生命エネルギーの強さの、極端な違い。その両極端両方が、ニンゲンなのだ。

  んで、ともかくも、2時間後。野放し豚の石焼とは、…あれまあ、こんなにウマイもんか!日本でさほど肉を食べない私も、豚肉の臭みは覚えてる。でもコレ、臭いどころか。なんてこうばしい、ふくいくとした香り高さ!美食評論家がうなりそうだ。
  そうして、動物が人間によって切り裂かれる様をじっと見ていた夢さん。彼女も、その豚が焼かれると、夢中になってうまそうにたくさんむさぼり食ったのだった。この自然界の循環を、もともと知ってるかのように。



熱〜い石の中に豚の肉、さらに焼け石を重ねる。

そうして幾重にもふたをする。
                                  

出来上がり!なんとも感動的に香ばしい匂い!さて、これを近所じゅうに配りあるくのが子供の仕事。
             
夢さんの食いっぷりは、「千と千尋」のぶたになった父母のよう。

          


 

サバイイ島8 200人を家で接待、これ普通。
 サモアってどこ?


         ★=現在地

             1歳の赤ん坊と日本を脱出するまで



 
1 初めての人の輪も濃い!

 フェアばあちゃんの「超簡単子育て」

3 海辺で(餅つきでなく)

  サモアン・ココアつき

4 「友情とお金は切り離せない」?!


5 知らない人の膝に乗るのが

  サモアのバス

6 同じ空間、
  子供の世界と大人の世界

1 村みんなが「家族」ってこういうこと

2 鶏は家の中、子供は扇風機役


3 川での行水にはコツがある


4 ー海ー 魂の源


5 夢さんは村の子になっちゃった…


6 働き者は損をする…?


7 交通事故のブタは石焼に!


8 200人を家で接待、これ普通。

9 母親である前に人間だから

10 ヒョイ!の眉あげあいさつ

                 大切なあとがき

体験 体験 体験
うっま〜い石焼、
「ウム」料理
チャチャっと編む
ヤシの葉のかご
木の皮の布、
「シアポー」づくり

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