● ナヌマンガ島2008年の日記 5月12日 |
ー 草ぶき屋根のふきかえ 2 ー
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屋根ふきも終盤のころ。 アセナティが、 |
ファトゥイヴィが登った。 まず、屋根のてっぺんに、屋根材「ラウ」(前ページ)をふたつ、 向かいあわせて結びつけたものを、 右斜面、左斜面にまたがせて、棒でとめる。 両斜面で、下から重ねてふいてきた「ラウ」の、 一番てっぺんをかざるラウのペアだ。 あらかじめ結んでペアになったラウを、 下からチヒリが「あらよっ」。 次々と屋根のてっぺんにむかって棒でかかげていく。 |
そして、そのラウの さらにてっぺん。 この青々とした 椰子の葉の、 「ファカタフィティ」をかぶせ、 棒で止めていくのだ。 右から左に。 屋根の右斜面と左斜面を しっかりと閉じて ぐっ、ぐっ、とつらぬいていく。 筋肉りゅうりゅうと、 額(ひたい)に汗しながら 屋根のこちらからあちらに 力いっぱい、 棒をつきさしていくファトゥイヴィ。 なぜ、みんなが笑ったか 今やっとわかった。 わたしにこの筋力が あるわけはなかったのだ。 |
オシエじいちゃんの家(「オシエじいちゃんの家」)は 生き返った。 アセナティがひとりで、森にとりにいったファラの葉。 それをみんなでなめした。 (4月28日「千代の富士おんなの瞳」) アセナティとわたしで、縫った。 (5月9日「屋根材を縫う」) 男たちも出てきて、総出でふいた。 (5月12日「草ぶき屋根のふきかえ1」) 自分がこの手でしたこと。 目の前にいる家族たちと、一緒に汗したこと。 それが、この頭上、ファラの葉のすがすがしい匂いになっている。 こののち。 7ヶ月間この島にいる間、わたしは何度も 森をぬけてここへ来て この屋根の下で寝っころがった。 そしてそのたびに、 この全身のすみずみに 確かな血が流れ、 エネルギーが静かに湧くように充電されていった。 ラウ(屋根材)を縫っていたとき、 アセナティは言っていた。 「いいもんだよぉ。 自分たちで作った屋根の下で寝るのは。」 ほんとうに、そのとおりだった。 こんな、地からゆっくりと芽が顔をだすような充実感はー。 この20年間、日本であらゆる「創造的な」仕事をして生きてきても 体験したことがなかった。 |
さて、この屋根葺きの日。 |