● ナヌマンガ島2008年の日記 5月9日 |
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ー 屋根材を縫う ー
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今日で3日目だ。 |
● 屋根材「ラウ」の縫い方 ●
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わたしは何度も |
それでも2日目には わたしも使えるラウが 縫えるようになってきた。 アセナティは言う。 「今の島の若いひとはね。 このラウの縫い方、 知らないひとも多いんだ。 トタンの屋根は暑いし しかもお金がかかる。 ファラの葉でふいた屋根は 涼しい。 お金は1ドルだっていらない。 材料はぜんぶ、この森から。 いるのは、 自分のからだの力だけ。 お金がなくなったらみんな どうするんだろうね。 ま、島の外に出て 働くんだろうね。 そして暑いトタンの屋根で 家を建てて。 ご時勢かね。」 |
アセナティの娘、9歳のフィメマがウトをとってきた。 ウトというのは、皮が甘い種類のココナツだ。 硬い皮を、奥歯を使ってむんずっとむく。 歯でひっぺがしては、 その皮を妹のハイチアにもわけてやる。 |
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トタンの屋根は |
わたしたちは3日間、朝から晩まで、ふたりで縫い続けた。
おしゃべりをしながら、ナヌマンガ島の歌をうたいながら、縫い続けた。 そして377枚のラウができた。 3日目の夜。 ふたりは森をぬけて家に帰った。 それぞれの大切な道具、鉄の針「トゥイラウ」を手に持って。 ガサガサガサとわたしたちの胴体が藪(やぶ)をかきわける音。 暗くなった森で 野鳥をとる男が樹に登っていく。 足元ではゴゾゾゾッと 森蟹が横切った。 あごごごぉっっと伸びる声を天に投げて、野鳥ゴゴが オレンジ色の空を彼方に横切っていった。 いろんな虫の声や土の匂いが暗闇で踊る。 このゆうべ。 汗べっとりのからだで黒い木々をかきわけながら。 はじめて、少しだけ、 ナヌマンガの森の 一部になれた気がした。 |