● ナヌマンガ島2008年の日記 5月17日 |
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ー 酔っぱらいチヒリ ー
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カヌーを修理するチヒリ チヒリは23歳。 |
チヒリが別人になるときがある。 |
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ーはじめはおとなしく。ーだんだん声がでかくなる。 1時間もすれば、ゆでだこチヒリのできあがり。 「いょおおお〜。ナツ、元気ぃ〜〜? どぉうだぁい〜!」 ふだんとはうってかわって、ヘロヘロ、ベラベラ、「寄るな!」ってぐらい人なつっこい酔っぱらい。 フォラやルタ、兄嫁たちは、「やぁねぇ、またよ。」と陰口ひそひそ。 ★1 カレヴェ採りの写真= バイツプ島実況写真「家族のご紹介」 バイツプ島社会構造4「島で暮らすということ」 |
● ツバルの酒飲み ●
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折りしも、この2ヶ月はWOWOWドキュメンタリー「夢菜7歳の島」の撮影隊、ノリさんとゲンさんがこの家に同居。
この家族の日常を撮影をしながら一緒に暮らしていた。 ところが、ふたりが日本に帰る日は近づいているというのに、たまたま間が悪くて、 プラカ芋畑で働く家族の風景をまだ撮影できていなかった。 わたしは家族のみんなにふれ回っていた。 「プラカ畑に作業しに行くときは、ふたりを連れて行ってね。」 その日の朝のチヒリはいつになく明るかった。 「ナツ!豚の世話が終わったら、ノリとゲンを連れて、プラカ畑に行こう!」 「ほんと!やった!」 思えばあの明るさ…。朝から少し酒がはいっていたのだ。 待ちぼうけをくらう撮影隊。重たい機材と準備が無駄になった。 撮影日も残り少ない。 できるだけたくさんの「ナヌマンガ島の暮らし」を撮りためたい 番組スタッフは焦る。 昼も過ぎてから、足元フラフラ、白目むいて吐きながら帰ってきたチヒリ。 そして今度は酔っ払い仲間たちと 大音量でヒップホップを流してのバカ踊りだ。 ーみっともなくて目もあてられない。 (でもついビデオに撮った。) さらに。 いつも小さな子ども達が、トイレに間に合わず家の周りでウンチをしたのをよく掃除していた。 この日も、「スリタ(2歳)かな。ピスィレレ(3歳)かな。それにしては特大だ。」と思いながら 箒(ほうき)と水ではき流した、洗濯場のウンチが。 酔ったチヒリのものであったことが後で判明した。 −うげぇえ。 マロソーばあちゃんは、チヒリのいないところで、いつもこう言った。 「あいつは、ふたごの先に出たほうだから、できそこないだよ。」 チヒリは、嫁にいったばあちゃんの娘、テクアとふたごの兄妹なのだ。 ふたごの先に出たほう…それを「フアレレ」と呼んで この島では、昔から忌み嫌う。 「フアレレ」のチヒリ。 母親からそんなふうに言われて育ったチヒリ。 そんなチヒリに、感情移入して、いつも見ていたわたし。 だが。この日ばかりは愛想がつきた。 「ナツ、ごめんねぇ〜。」 デレデレと臭い息であやまってくる酔っぱらいチヒリを わたしは睨みつけながら無視して、背を向けた。 けれどその向けた背中の後ろに、やはり他人ではないものを感じて困惑した。 「このひと。この先、どうなるんだろう…。」
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