● ナヌマンガ島2008年の日記 5月24日
  ー マロソーばあちゃんと森 ー


マロソーばあちゃんとふたりで、森に来た。
家の周りをはく箒(ほうき)がたりないってんで、作りにきた。

箒(ほうき)は、椰子の葉の葉芯をすいて、たばねて作る。
(★1)


★1 地球上、椰子のある地域広くで、椰子の葉の芯で箒(ほうき)を作ります。
   ナツもサモアでも作りました。→「南の島子連れ滞在記」

森の奥
アヒル小屋の近くの
木陰に陣取って

その辺の
椰子の葉を切る。

分厚い椰子の葉の根元に
ナタをふりおろす。
なんども、なんども。

「なんてにぶいんだ、
このナタは。
今朝チヒリに
研(と)ぐように言ったのに
ちっとも
研げていやしない。」

ぶつぶつと文句を言う。

わたしが
ナタをふりおろす。
「もっと上にナタをあげて。
力が入ってないね!
同じところに
ナタが入らないと
いつまでも切れないよ!」



額に汗して
大きな6枝の
椰子の葉を切り落とす。


箒(ほうき)2本ぶんの
葉芯が、とれる。


「あぁ、だめだよ。ナツ。
葉をすくときは
ナイフの背を使うんだ。
葉芯が
切れちゃうじゃないか。」



シャッ、シャッと
ふたりが葉をすく音の中

ほんの時々
マロソーばあちゃんは
何か言う。

「ノリとゲンも
連れてきてやりたかったよ。
ずっと村の中にいてると
息がつまるだろう。

森はいいよ。
あたしは森に来ないと
窮屈でだめだね。」

「昔、キリバスやナウルに
いたときはね。
街だから
パラギ(外国人)もいたけど
なんだか恐かったもんだよ。

いまじゃ、あんたがノリやゲンを
連れてきてくれたおかげで
すっかり親近感がわくよ。」






さて、ここで。
見てくださっているあなたに、マロソーばあちゃんの隣にすわって
一緒に椰子の葉をすいてほしいと思います。
ただじっと、見てください。
しゃっ、しゃっ、という音が聴こえてきます。
椰子の葉の匂い、いろんな植物と土の匂いがしてきます。












そしてマロソーばあちゃんは、あなたに 何か語りかけます。





「のどが渇いたね。」

ばあちゃんの指図で
わたしは起き上がり
その辺におちているココナツから
なるべく若いのを探してくる。

中のココナツ水が
こぼれないように
ナタで割るのは
わたしにはまだできない。
ばあちゃんに渡す。

ふたり並んで
ごくりごくりと飲み干した。
ばあちゃんはわたしを見て
にかぁっと笑った。

おこぼれのココナツに
アヒルたちがペタペタペタと
寄ってきた。




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