● ナヌマンガ島2008年の日記 5月26日
   ー ござ編み ー


これが、ござの編みはじめだ。

7月に「おんなの祭り」がある。
それまでに島の女はみんな、上等な大判の装飾ござ
を、ひとり一枚づつ編まねばならない。

マロソーばあちゃんが、
炊事で忙しい嫁のルタの分を編みはじめた。
自分のぶんはすでに終わっている。

わたしは簡単な模様編みなら過去にもやった。
今回は編みはじめや両端の処理も覚えたいと、マロソーばあちゃんにはりついた。




● ツバルのござ ●


@ 大判の装飾ござ
  (ナヌマンガ語「メアモエ」 
   バイツプ語「メケイ」)

A 普段使い用
  (「パパ」)

B 子どもの誕生祝い用の
   小サイズ
   (ナヌマンガ語「カパルア」 
   バイツプ語「エパ」)

ツバルの手織りござには、上のような種類があります。

ナヌマンガ島では「キエ」という丈夫で強いパンダナス葉を育ててござに使い、
しかも複雑で美しい伝統模様を編みこみます。
なのでツバル全土でも「ござ編みの島」として知られています。

 特選写真集「ナヌマンガ島のござ」

 キエ=特選写真集「シモネタ女テイカ」




わたしは手帳に、
編み始めの手順を
記録する。

マロソーばあちゃん、
そんなことは
おかまいなく、
ひとりで編む手元を
にらんでブツブツ。

「…どうだったっけ。
このへん忘れたよ。
あぁ、まちがえてるよ…。
あたしゃ頭悪いね。
ああ、こうだ。
んで、こうして…。」

ストップをかけるわたし。
「ちょっとそこ、待って!
メモとるから。」

ばあちゃん、
うっとうしそう。

「こんなことは、
何度もやってるうちに
覚えるんだよ。
書いてどうすんの。」
と、その顔が言っていた。



ばあちゃんの
ぶんを編む時は、
若いルタも
少し指導を受けた。


今日スタートした
ルタのぶんは…。

この13日後に
編みあがるまで毎日、
ちょうどこのように
わたしがばあちゃんの
横で編むことになる。



ござ編みのつらいところは。

そうです。
「腰が痛い」。

3年前に
はじめて編んだとき
たった3時間で
次の日、寝床から起きれない
激腰痛になった。

姿勢を工夫するようになって
やっと今回は1日中でも
編んでられるようになった。


それでも
ナヌマンガのおんなは、
みんな言う。

「わたしらの人生は、
ござを編んで、編んで、
また編んで。
腰が痛い暮らしだよ。」




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