テイカには夫はいない。
私生児である5人の子どももよその島で暮らしている。
島の長(おさ)の家にひとり、
居候をしている。
いつもカレヴェ(ココナツの樹液)を
ぐつぐつと炊きながら、
ウクレレをじゃかじゃか鳴らして、
軽いテンポの恋歌を歌っている。
シモネタが大好きだ。
わたしが何を話しても、その方向へ
持って行く。
うんざりするわたしを見ては
「ひゅ〜ひぇ、ひぇ、ひぇ〜ひぇ!!」
と、ツバル人独特の奇声を発して
転げまわって笑う。
丈夫なござをつくるには「キエ」という種類のパンダナスの葉を使う。
この「キエ」は、自然繁殖するパンダナス「ファラ」とは違い、植えて世話をしないと育たない。
テイカは、「キエ」育てでは、
島でピカイチの腕をもつ。
今日も人に分けてと頼まれて、
キエの葉を100枚切りに、森に来た。
するどい棘(とげ)の木にのぼり、
硬くて長いイガイガの葉を、
ばさりっ、ばっさりと、切っていく。
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