● ナヌマンガ島2008年の日記 5月12日
  ー 草ぶき屋根のふきかえ 1 ー


「ほい、次をくれ!」
屋根の上からの声に、フォラは棒でラウ(屋根材)を高々と持ち上げる。
草ぶきの重なる奥からニュッと出た手が、それを受けとる。パシッ。

今日はいよいよ、屋根のふきかえ。
準備してきたこの屋根材は、ここー、今は亡きオシエじいちゃんの家
(★1)の屋根のためなのだ。


★1=「オシエじいちゃんの家」



下界から屋根に届けられる新しいラウ(屋根材)は
まぶしい太陽をはねかえして誇らしげ。

マロソーばあちゃんの末息子、チヒリも来た。
チヒリは、叔父であるオシエじいにもらわれて、
この家で育てられたのだ。



● ファラの葉の屋根のふき方 ●


↑足場板の高さは2.5mほど。


3年前、ここで毎日昼寝をしていたオシエじい。
カヌーの作り方や縄の編み方を人々に教え、冗談を飛ばしていたオシエじい。

3年ぶりにこの島に来た。
オシエじいは死んでいた。
そして、この家は荒れ果て、雨漏り穴だらけの屋根になっていた。

アセナティは言った。
「あたしはね、この家を生き返らせたいんだ。
日曜日には、教会が終わったら、みんなでここに来てゆっくりしようよ。」

アセナティはひとりでファラの葉を集めに森に入った。

アセナティとわたしがラウ(屋根材)を縫ったときに使った針(トゥイラウ)も、
今日、屋根を葺くのに使った針(アトラウ)も、
すべて、オシエじいが作ったものだ。

わたしたちが手に汗しながら握るこの道具の中にー。
そして、村から離れた森の奥のこの地に、
久しぶりに集まる男や女の、かけ声の中にー。
オシエじいが、いま、生きているのを、
わたしのからだは感じていた。







この日からしばらくして。
村の中、我が家のお隣のターペーも、屋根をふきかえる。
熱いトタン屋根をのがれて、よく涼みにおじゃましている家。
で、やっぱりファラの葉をなめす作業やラウ縫いを手伝った。




屋根をふくための針
(アトラウ)は、
鉄でも、木でも作る。

これはギエという
硬い木で
作っている。

 (バイツプ島)




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