「星の砂の絵本をツバルに」プロジェクト
ご報告 2 帰国後 |
さて二月末に帰国。3月8日、「絵本の貨物が着いた」と港から連絡がきました。そしてツバル国教会総本部から、教会の環境活動代表のマイナが港に貨物を引き取りに走りました。マイナは筆者のツバル人父さんタリアの息子でわが「ツバル人弟」。近年フナフチの教会本部赴任になってから、ナツはフナフチでは毎回マイナの家に世話になっています。今回も絵本プロジェクトの大切なツバル人担い手となりました。
ところがここで、このあと3ヶ月間、絵本が港の倉庫にとめおかれることになる大きな問題が発生しました。税関が、関税免除依頼のレターを却下、関税を払えと主張してきたのです。松舘さんはレターを書き直しましたが、それでも税関は納得しません。マイナは再三、絵本の意義を税関に説明しましたが、その後メールで伝えてきました。「どうしても通してくれない。税関職員の態度はかたくなでイライラする」と。 税関の主張はこう。「ツバルでは、たとえ寄贈品でも、ツバル政府あてのものでなければ関税の義務がある」 しかし、過去5年のJICA有孔虫プロジェクトはツバル環境省との合同プロジェクトなので、この絵本1000部も受取人はツバル環境省です。港に実際に引き取りに来るのが、絵本配布担当のツバル国教会なので、貨物インボイスの受取人をツバル国教会と記載していたのが、税関が誤解する原因となってしまったのです。 松舘さんとマイナは、過去のJICA有孔虫プロジェクト担当であったツバル環境省某官僚にヘルプを依頼しました。「税関に、絵本が環境省への寄贈品であることを釈明してくれ」。「了解」との短い返事のあと―。日本からの「どうなった?」というメールに、かの官僚は全く返事をよこしてくれない長い時期がありました。筆者も何度もメールを出しました。 3月には絵本が市民に配られて、みなさんにご報告ができると思っていたのに―。これがみなさんのご寄付で支えられているものでなければ、もう少しおおらかにかまえられたのでしょう。なにせツバルはツバルタイムです。島を行き来する船が1、2ヶ月遅れても、みんなのんびり待っている国です。けれど今回は―。「みんなに報告すると約束したのに」という内なる日本人型「義理」気質に迫られました。「今週こそは」とキリキリと引き裂かれるような胸を抱えてメールを打ち続ける3ヶ月でした。南太平洋の島暮らしが長くとも、日本では日本の価値観で対人関係を思考している自らの内面を、嫌というほど実感しました。 |
3ヶ月間、港の倉庫で引きとめられた末、ようやく教会でみんなの手に。(撮影:マイナ) |
そして6月初にようやく―。マイナから「再び税関とひと悶着した後、絵本をやっと教会総本部に運んだ。」とのメール。松舘さんとわたしは、飛びあがって喜びました。そして、6月7日、日曜日。絵本1000部は、フナフチにある5つの教会にて、人々に、有孔虫の説明チラシとともに配られたのです。
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本の上に添えられているのは有孔虫についての説明チラシ。(撮影:マイナ) |
みなさん、本当にありがとうございました。そしてご報告をお待たせいたしました。
筆者は2015年12月にふたたびツバル、ナヌマンガ島に渡航する予定です。その際にも、中継地点であるフナフチでは、船を待つあいだ、各家庭にある絵本を子どもたちに読み聞かせたり有孔虫のことを話したりという、草の根レベルで絵本プロジェクトのフォローアップをしようと思っています。 |
ツバルも、発展途上の国のごたぶんにもれず、人々の関心は環境より進歩や便利さへと急速に変化している国です。そんな中で、この絵本に触れる子どもたちの中から、ひとりでも「この国はサンゴと有孔虫でできている」「海の自然を守ることが自分の足元を守ることになるんだ」ということを肌で理解して、ツバルを担う人がでてきてくれたら―。そうなれば、このプロジェクトは大成功です。 |
みなさん、ほんとうに、ファカフェタイ・ラシラシ…! (どうもありがとうございました) |
★ 「星の砂の絵本をツバルに」プロジェクト もくじ ★ |
1 「星の砂の絵本をツバルに」プロジェクトとは 2 ご寄付総計と経費のご報告 3 ご報告1 ツバルにて 4 ご報告2 帰国後 (このページ) ● 星の砂の絵本 『笑顔の島のつくりかた』 日本語版。 ぜひ読んでみてください。 ● ツバル語ソング「海から生まれた国」 有孔虫のことをツバル人に広めるために作った歌です。 ツバルの映像とともにYouTubeにて。 |