● ナヌマンガ島   

 

  ー 花冠(はなかんむり)の島 ー



薄く裂いたキエの葉(ナヌマンガ語で「ガレガレ」)を、
サンゴ石灰の染料に入れるため、たたんでゆくテアギナ。
ござや草スカートの装飾に使う。

テアギナ(★1)は 
朝から晩まで働いている。

朝5時半に起きて
鶏やアヒルにやるココナツを削る。

プラカ畑に行く。

ゴザを編むキエの葉を取りに行く。

汗びっしょりになっては、
水浴びをして、
そしてまた森に出かける。

夜は10時までゴザを編んでいる。






★1 テアギナ=
ナヌマンガ島で一緒に暮らしていた
ホームステイ先母ちゃん。
独り暮らし。



染めるキエの葉(ガレガレ)の準備。
トゲをとって、
これから海水湖につけこむ。

プラカ芋を収穫。
働きます。

ゴザを編むためのキエの葉を刈る。
働きます。


豚・鶏・アヒルにやるため、ココナツをたくさん割る。
(中央:夢さん4歳)

プラカ芋の皮をむいて、
これから島の祭に捧げる料理をする。

昼間、プラカ芋畑に一緒に出かける。
いくつかの株の周囲に堆肥の土手をつくって、汗だくになる。

テアギナは笑って汗をぬぐう。
「はぁ。あたしもあんたも、泥だらけだね。」

―テアギナは、その汗をぬぐう自分の手の向こう、プラカ芋畑の土手に、プアフィティの花(★2)を見つける。

すると、そっと花を摘んで、そのへんの椰子の若葉を切り取って、それにくるんでおく。

わたしは聞く。
「どうするの?プアフィティ。」 

テアギナはまたにっこりと笑う。
「家に持って帰るんだよ。」



夜、一緒にゴザを編む。

「そろそろ10時になるよ。今日の仕事は、終わろうねぇ。」
テアギナはそう言って、わたしを見て、またにっこりする。
そうして、
編みかけのござとキエの葉をがさがさと簀巻き(すまき)に巻いて
部屋の隅にひとまとめにする。

その後。
おもむろに―。
片隅に置いてあった、今日森で摘んだプアフィティの花をひろげる。

そしてゆっくり、
ファラの干し葉を三つ編みにして、
その花たちで、花冠ー 
−ツバル語で「フォウfou」ー を
編み始める。

夜、11時になるという頃。

すべての仕事を終えたテアギナは、時々こうして
花冠を編む。

テアギナは、
ゆっくりとわたしに語りかけた。

「私はね、こうして花冠を編むのが、
好きなんだよ。
どんなに仕事がたくさんあって、
疲れていても、ときどき、
こうして寝る前に、
明日かぶる花冠を編む。

―この時間が、とても好きなんだよ。」


次の日の朝5時半。
テアギナは、がぁりがぁりと、
ココナツを削っていた。
昨夜編んだ花冠をすっと頭にのせて。


朝ごはんでひと休みして。
切ったココナツの入ったバケツと、
たくさんのココナツ葉の肥料を
リヤカーにわんさと積んで、
森の豚小屋とプラカ畑に出かけるときも。

その花冠は優しそうに嬉しそうに
テアギナの頭を飾っていた。


ツバルでは、どこの島でも、祭りや祝い事のたびに
みんな花冠を編んでかぶる。

けれどもこうして、
普段にも。
ただ畑に行くために編んでは、
頭に ほうっと、のせるのだ。


★2 プァフィティ=花冠をつくるのによく使う、ふくいくとした芳香の木花。
バイツプ島実況写真その2・2段目右の写真 / バイツプ島実況写真その3・3段目右の写真




これはクルアキ。
島1件の生協店での仕事が終わった夕方、
今度はプラカ芋畑に働きに出かける。

こうして枯れたココナツ葉を編んで、
堆肥を埋める土手壁をつくる。


マロソー婆ちゃん。
ゴザを編むキエの葉の下ごしらえ。
ごわごわの厚い葉を、
重い杵で何度も叩いて(なめす。
たいへんな重労働。
わたしはこれで何度も筋肉痛になった。



この花冠はタロタロ(ユリ科)の花。
親戚のテニコばあちゃんが、
キエの葉をくるくると巻いて、
葉の反りを正す仕事をしている。
これも、ゴザ編みのための下ごしらえだ。

執筆 2007年12月18日



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