● ナヌマンガ島の日の出 バイツプ島の夕暮れ ナヌマンガ島 6 |
― 幸せの草ぶき小屋 ―
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プアの木で小屋の屋根を組むウィニ (2011年2月3日)
そんなことを夜中に繰り返した。ひどい夜には、喉を湿(しめ)らせて眠っても数時間するとまたむせかえる。わたしはふたたび起きて調理場に走り、マッチをする。夜中に二、三度、ボロボロの灯油コンロと真っ黒な煤(すす)と格闘する。 |
バルルルルッとエンジンのなる自動三輪トラックに、子どもたちが飛び乗った。小さなトラックで島の森をドライブするのは、最高のレジャーだ。あちこちの森を回って、手ごろなプアの木を見つけては、ウィニが切り倒す。それを子どもたちとわたしで、トラックに運ぶ。 帰るとすぐ、十一歳のフィメマがナイフでプアの木の皮を削りだした。七歳のハイチアや、十歳の夢さんも、嬉々としてまねをする。三人の子どもたちは、はしゃぎながら木の皮を削り続けた。 |
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削れた木を数日間乾かした後。ウィニはカナヅチをゴンゴンとやって、骨組みを建てはじめた。アセナティとわたしは三年前と同じように、ファラの葉をなめして、屋根材を縫う。家族のみんなが、この小屋のためにワクワクと作業をした。 縫いあがった屋根材を、ウィニとわたしとで屋根の骨組みに縛っては葺(ふ)いていく。三年前にも葺いたけど、すっかり忘れている。ウィニの手元を見たり、ノートを引っぱり出してきて苦戦した。(★2) ★2 三年前の屋根葺(ふ)き=ナヌマンガ島2008年の日記―草ぶき屋根のふきかえ― |
屋根葺(ふ)きの日。みんなが嬉々としていた。わたしは疲れて横になる。 (2011年2月4日) |
昼どきになると、子どもたちが家の裏の火床から、ふかしたブレッドフルーツと焼いた飛び魚を運んできた。 |
プアの木の柱。椰子の葉の骨を並べて組んだ床。ファラの葉の屋根。小さな、ちいさな小屋。それがこんなに美しいのは、長年育(はぐく)まれてきた島の森と、人間の知恵がひとつになっているからだ。そして、楽しんで作る人たちの明るい心も、キラキラとつまっている。 |
わたしは執筆をするときには暑いトタン屋根の母屋を逃れ、この小屋に文机と資料をおっぴろげて作業した。 通りを行く人々が「あらっ、ファレラウ(草ぶきの小屋)じゃない。いいねぇ〜。」と言って立ち寄る。くっちゃべって、わたしの横でゴロンとしていく。学校帰りの子どもたちが来て、わたしにくっついて、教えた折り紙をして遊ぶ。毎日いろんな人がこの小さな空間で涼んでいく。 |
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またひとつ、この島で、ひとの創りだすものの美しさに、魂の底から震撼した。 執筆 2012年 6月26日 |
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