● ナヌマンガ島2008年の日記 5月31日

     ー なんでもできるトギア ー  


トギアが、深夜
磯漁(いそりょう)に
行ってきた。

朝起きてみると
サヨリなどたくさんの
小さい魚のほかに
大きなロブスターを4匹
見せてきた。
そして「どうだ」と笑った。

その瞳は
誇らしげに輝いていた。

トギアは
マロソーばあちゃんの
3人息子のなかで
一番上の兄ちゃんだ。

曳き漁もうまい。
(→「大漁」
野鳥捕りもダントツ。

島一軒の生協の
店員もしていて
現金収入も一番だ。

よくしゃべる。
じょうだん好きで
人をよく笑わす。

聖歌隊の
リーダーまでしている。
この島の賛美歌を
たくさん作曲した。

そして夜にはいい声で
ギターをつまびく。


末っ子チヒリ
(→「酔っ払いチヒリ」
との対照が
くっきりとしていた。


「できそこない」と言われ、内気なチヒリ。
そんな末っ子をわたしはつい気にかけて、声をかけていた。

けれども、いつも島の暮らしのことをすすんで教えてくれるトギアには
心の底では感じている感謝を 素直に表したことがなかった。

みんなが笑うトギアの冗談に冷たい顔をして、
「おもしろくないぞ」とつっこんだりした。

トギアの前ではなんとなく 自分もエラそうにしていたかった。
なんでもできて明るいトギアを 素直にたたえるのが、なぜかくやしかったのだ。

わたしも2人姉妹の妹だ。
子どもの頃からの「できる長子へのひがみ」が でていたんだろう。

次にナヌマンガ島に帰ったら、もっとトギアとおしゃべりしてみようかー。

聞きたかったことを 聞いてみようかー。
「トギアはどうして そんなになんでもできるの? 」って。



● 磯漁について行ったとき ●

磯漁(ツバル語「ラーマガ」)はー。
新月か満月の夜、深夜に引き潮になる頃にでかける。
波ぎわの極端にデコボコの岩礁を、足半分は海につかって、岩場にひそむ小さな魚たちを探して
ピョンピョンとびながらひたすら歩く。深いところに行くと半身はすっかり水中。熱帯といえど夜中。冷たくて寒い!
しかし夢さん(7歳)は上からずぶ濡れでキャアキャアはしゃいでいた。



魚を見つけたら、
すばやく網ですくう。
トギアの網は、
まるで
モリで突き刺すように
目をみはるスピードで
魚をすくう。



● 昨夜の磯漁でトギアが捕った魚 ●

1.トゥテ (さよりの種類)

学名 hyporhamphus dussumieri
英名 Garfish

 生でガブリ!もうまい。
2.イセ (だつの種類)

英名 Needlefish

下あごだけ長いトゥテと違って上あごも長い。 大きくなるとガリオリオ(ニウタオ島語「マリオリオ」)と名前をかえる出世魚。(1m以上にもなる。)

★和名など判定協力:荒木晴香氏
3.ラウラウファオ (ちょうはん)

学名 chaetodon lunula
英名 Butterfly Fish

4.フアカナセ (ぼらの種類)

 ツバル名 Kanase
 学名 valamugil seheli
 英名 Bluetail Mullet
  −の稚魚。

成長したカナセ→
バイツプ島実況写真「海とココナツと人と」
5.タラキヒ (和名その他未解明)
6.プーシ・モアナ (うつぼの種類)

 このツバル語名は、
 「海に住むネコ」という意味。



↑夢さんの磯漁の絵日記。
  彼女にはウツボを見つけたことがいちばんの驚き。
  活躍したトギアなんて絵にも登場してない。


トギアの次男、3歳のピスィレレ

ロブスターはツバル語で「ウラ」。
海水でゆでて、うまいぞぉ。 




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