● バイツプ島の社会構造 1 |
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ー どこにでもあるヒエラルキー ー
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祭りのときの島集会所「マネアパ・アニプレ」。柱の内側に座る人々は“えらい人々”だ。 “えらい人々”には、だいたいいつも決まってもたれる、指定柱がある。 そのほかの島民は、柱の外側。 (写真中央の柱にもたれているおばあちゃんも、これは外側にもたれてるので、“えらい人”ではない。) だから混雑の時は、やたらと柱の外側ばかりが大賑わい。 柱の内側は、高尚な場所なのだ。 |
港からのぞむバイツプ島の中心広場。
広場の奥、真っ白い建物が教会。 右側に3件並んでいるのが、右側から店倉庫・店・そして集会所マネアパ・アニプレ(黄色っぽい建物。) (↑ベビーカーに乗っているのは、バイツプ島第1日目の夢さん。) 島集会の開かれているマネアパ・アニプレ 集会中、壁にもたれて編み物・トランプのばあちゃん達。 ファレ・カウプレ・ヒエラルキーと集会所指定柱についてのナツのノート。 |
● 島の伝統ヒエラルキー
「ファレ・カウプレ」 ● バイツプ島。 5.6km2の島に、約1600人、240世帯の人々が住む。 (★1) (★2) 今年のブタの重さ競争大会はいつにするか。 島創立記念祭の数日間のプログラムは? 牧師へ寄進する食糧の係の持ち回りは、去年と同じでOKか? そういった、ありとあらゆる、島の自治に関することを決めるシステムは、「ファレ・カウプレ」がつかさどる。 「ファレ・カウプレ(fale kaupule)」。 ファレは「家」、カウは「グループ」、プレは「リーダー、トップ」という意味。 建前的には、18歳以上の島民全員が「ファレ・カウプレ」のメンバーだ。 何か議題があるたびに、島集会(フォノ・オテ・ファレ・カウプレ fono ote fale kaupule / island meeting)がもたれる。 集まる場所は、島の中心に建つ一番大きな集会所、マネアパ・アニプレだ。 その島集会には、18歳以上なら誰でも参加していい。 しかし実際には、50歳より前の“若い衆”や、そして女性たちには、ほとんど実質上の発言権はない。“若い衆“は、集会所の壁にもたれて、話の成り行きを見守るだけだ。 なんのために島集会にわざわざ来て、編み物やらトランプやらしているのやらん…。と思ったが、この機会にばあちゃんネットワークが集まるのが目的なのかもしれない。 形式上の権利は与えられているにしろ、政治社会において女性の実際の発言権や多くの女性本人の意識が低いのは、日本と似たようなものだ。 そして、20代で集会に参加している人は、見渡しても一人もいなかった。 集会が終わってから、40代男性であるトォファンガに、聞いてみた。 「トォファンガは、集会で発言して意見を言うことはないの?」 彼いわく。「いやぁ…。オールド・マン達に、『なまいきだ』と思われてもやりにくくなるしねぇ。 ただ、島のことをきちんと把握しておきたいから、聞きにきてるんだよ。」 年を経るごとに、「オールド・マン」と言われはじめ、尊敬を受け、大切にされ、島集会での発言権がでてくる。 別に滞在したナヌマンガ島では、「トエアイナ(toeaina 年配の男)」と敬意をこめたツバル語で表現していたが、バイツプ島の人たちは今ではオールド・マン、オールド・マンと英語を使っている。 ● 6人の長老「アリキ」たちと、 そしてそのオールド・マンたちの中でも、この「ファレ・カウプレ」を代表する6人のチーフ達というのがいる。その6人を、ツバル語で「アリキ」と呼ぶ。(aliki) 伝統的に昔から、この島の3大家系である、トゥア家・ロトア家・キリタイ家から各2名ずつの長老たちが座していて、普通は死ぬまでその地位は変わらない。 (Tua, Lotoa, Kilitai) そしてさらに、その6人の中での最長老、「ウル・アリキ」(ウルは頭とか頂上、最高地点という意味。)がいる。 つまりはウル・アリキが島の最高長老だ。(ulu aliki)(英語/Paramount Chief) 最高長老ウル・アリキと、副最高長老タオ・アリキは、伝統的に決まっている6人のアリキの中から、島民全員による選挙で選ばれる。(「タオ」taoは「覆う」「代理する」の意味。) 選挙は4年に1度。紙に記入して箱に投入する非公開式選挙だ。 この最高長老ウル・アリキ他5名のアリキは、いつも上記の島集会(フォノ・オテ・ファレ・カウプレ/ island meeting) を召集し、とりまとめる役目をつかさどる。 |
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一番中央の2本の柱に、隣あわせて、島にただ一人の「島代表牧師」と、最高長老ウル・アリキが座る。 ツバルでは伝統的に、集会所で柱の前にすわるのは、ヒエラルキーの高い層なのだ。 祭り・集会、…いつの集まりで見ても、柱の前に座る人々は、その外側の壁に座る人たちより、物腰が重々しくて威厳がある。 なぁんだか、えらそうだ。 南の島というと単純な楽園イメージを持つのは、北半球の先進国の人々。 日本社会と同じように、「階級」を作りたがり、人の地位に上下のヒエラルキーを作りたがるんだ。 救われるのは、どんな人も、年を経るとその階級が一定以上には上がってくる、「自然年功序列」系の価値観だということだろうか。 年寄りになると、とても敬われ、大切にされ、柱の内側をゆるされ、村をリードしていくー。 ★ 1 バイツプ島人口 1591人 237世帯 ★ 2 バイツプ島その他の島の地図 |