● 水 3  〜硬いですが、知識編 続〜

 

ー 首都フナフチの水不足ー


フナフチではごくめずらしい、葉っぱ屋根の家(「ファレラウ」)のこの風景。ファーババウ村の入り口です。中央にセメントの雨水タンク、右手前に緑プラスチックの雨水タンクが見えます。葉っぱ屋根の家から水を集めているのではなく、トタン屋根のトイからです。前ページで解説したドラム缶も右手前に見えますね。今もよくドラム缶の横で人が体を洗ってます。


よく夢さんを預かってもらった、フナフチでは家族同然のつきあいをしたシンガノじいさん一家の末娘コレタ夫婦の家。前ページで書いた、戦争中にアメリカ軍が掘り起こした穴=池(bollow pits)の上にも、所狭しと家を建てていきます。
ごみの浮いた池だけど、子供らはここで遊ぶ。
これがフナフチの現状ー。

ごくごく飲む、若いココナツ。皮をむき落としたものを「ピー」、写真のように、森で皮つきのまま、飲み口だけ切って飲むと「ムコムコ」と呼びます。ココナツひとつでも、用途・状態によって、たくさん呼び名があります。詳しくは、ココナツの章で書きますね。(飲んでいるのは4歳の夢さん、ナヌマンガ島にて。)


フナフチ、
シンガノじいさんの家の前のココナツの木。
(ココナツを採っているのは、じいさん宅に毎日だべりに来ていたおしゃべりなポレシおじさん。) 日本から旅行客が来たときに、はりきって登ってみせて、ココナツジュースを振舞いました。
昔は、みんなが毎日、飲んでました。
今はそれが砂糖たっぷりの紅茶に変わりました。
糖尿病や痛風が、深刻な問題の現代ツバルです。

日本から来た、海水淡水化装置、「ウォーターボーイ」。
この淡水化工場で働くカイサミおじさんと。フナフチ。
● 人口 ●

 第二次世界大戦以前のフナフチ環礁に住むのは、ネイティブのフナフチ人のみなので、人口300人程度だったという。(シアオシ・フィニキ氏1936年生言・写真前ページ

 それが、現在は首都になったことで、各島からの人口流入で過密化問題を起こしています。

 人々が住む町があるフォンガファレ島の面積は1.9km2。
 なんと、1.4km四方の土地に約5000人が住んでいるのです。
(★1)

 山のない小さな小さな島に、これだけの、水を消費する人口が集中してしまったー。

 フナフチでは実際、住宅事情も深刻です。

前ページでも述べた、戦中にアメリカ軍が掘り起こし今となってはゴミの浮く海水の池になってるところー「bollow pits」。
 そのゴミの池の上にまで、現在、どんどんバラックの家を建てて住居が増えていってます。

 ツバル全体では、ヴァチカン市国についで世界で2番目に人口が少ない国なのに、なんだかおかしな感じです。

● ココナツ ● 


 もうひとつ。暮らしの大きな変化も見てみましょう。

 昔は毎朝、その日の1家の飲料分のココナツを、各家の若い衆が木に登っては、たくさん採りました。
 体を保つ飲料は水ではなく、ココナツだったのです。毎日、みんながココナツをたくさん飲んみました。
(フナフチ環礁・バイツプ島の年配の方々伝。)

 ところが今は、どこの家庭でも、ヤカンにたっぷりと沸かした水に、輸入の紅茶と輸入の砂糖―砂糖はたっぷり!ーを溶かしてゴクゴク飲む。
(これがツバルの大きな現代病問題を引き起こしている一要因だと強調したいのですが、その話は別件。)

 現代ツバルでは、ココナツを登って採るのは、冠婚葬祭の時、それに外国からの来客があった時、そして森に仕事に行く時(水筒より、現地で水分調達。)ーだけになってしまいました。

 しかも。どだい、ココナツを採れるのはそのココナツがはえている土地の持ち主だけなのです。

 5000人の住むフナフチ環礁の土地を土地区画により所有しているのは、現在人口約1000人のフナフチ人だけ。
(★2)
 他の島からの移住者4000人は、どのみち、この土地のココナツには、ありつけない仕組みです。

 そもそもこの狭いフナフチのココナツに対して、住んでいる人間の人口が多すぎるー。

 第二次世界大戦前。
 料理・洗濯・水浴びその他の暮らしに使う水は、島民300人、井戸とこの雨水地下タンクでじゅうぶんだったーといいます。(フナフチ:シアオシ・フィニキ氏)

 そんなわけで、現在の首都フナフチでは、ちょっと雨が降らないとたちまち、水不足問題が起こります。

 1999年に、日本政府の草の根無償援助プログラムで、海水淡水化装置が導入されました。
(海水淡水化装置は、同年、バイツプ島・ナヌマンガ島にも寄付。小林誠氏調べ。)

 その後2006年5月に再び水不足が起こったときには、日本政府は緊急で同じ海水淡水化装置を追加寄付。素晴らしくすばやい行動でした。

 また、既に2005年に日本民間資金から寄付されていた給水車は、その淡水化された水を、各家庭に届ける役目を果たしています。
(NPO「TuvaluOverview」が仲介しました。★3)

 
世界基準から見ると、あまりにも富める国、日本。
 その富の、ほ〜んの、ほんの一端は、今、フナフチに住む5000人の人々の暮らしを支えています。





★1 

A. フォンガファレ島の面積=1.878 km2。Tuvalu Land Survey統計。それをまとめたTuvalu Central Statistics Divisionツバル統計省のフナフチ面積は2.79 km2。しかし、これはフナフチ環礁内の多くの無人島を含む数字。実際に人が住んでいるのはその中でもフォンガファレ島。
(あとはフナファラ島に10名弱、アマトゥク島にある寄宿制船員学校に100名弱のみです。)

 Tuvalu Land Surveyは、フナフチの政府総合庁舎内にあって、訪ねていけば各島の地図が買えるほか、このように地理的な情報を提供してくれます。

B. フナフチの現在人口約5000人、というのは、Tuvalu Central Statistics Divisionツバル統計省>2002Censusの4492人から、近年のフナフチの急激な人口増加を見て推定しました。正確な数は次回のCensus(国勢調査)を期待。

C. a.b.から算出したフォンガファレ島の推定人口密度は2662人/ km2 (2007年現在 )。



★2 2007年の最新統計は2002年度のフナフチ人人口1004人。
Tuvalu Central Statistics Divisionツバル統計省 ホームページ 右欄Key-Statistics 二つ目の表

★3 TuvaluOverview>Topics>給水車をどうぞ。


執筆 2007年5月14日



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