● 2013年の暮らしから 写真集 5

 

  ー 森のチアチアばあ ー




雨があがった日。
チアチアばあちゃんは、まだ落ちたばかりの、葉が丈夫な茶色い椰子の葉を探して海沿いの森をゆく。
よいのを見つけては、手ごろな長さにバッキリと切る。


椰子の葉を抱えて、
次のを探して
ズンズンとゆく。
その足の、
速いこと、速いこと。





また見つけては、バッキリと切り




ズンズンゆく。





バッサリとやっては、





ズンズン、ズンズン、ズンズンとゆく。





椰子の葉を抱えて家に帰ったら。
しっけている葉が乾かないうちに
どんどん、どんどん編んでゆく。
葉はしっとりとしているうちが、
裂けずにきれいに編める。





作っていたのは、こういうものです。
ひさしにたらす、雨よけ。
「ティーポラ(Tipola)」という。

最近は青いビニールシートを
クルクル巻きにしておいて
使う家のほうが多い。
けれどもビニールシートでは
家の中はむんむんと蒸れる。

ティーポラは、雨は防ぐけれども
風は通す。
さやわかなのだ。



島では毎晩夜9時になると、当番が鐘(かね)を鳴らして村を回る。
子どもたちに「もう寝る時間だよ」と知らせるためだ。
いまはみんなバイクで回る。
けれども、チアチアばあちゃんだけは、歩きながらチリンチリンと鐘を鳴らして村じゅうをゆく。

ティーポラ編みを練習するため、チアチアばあちゃんの家に通っていたとき、いつもばあちゃんは言っていた。
「人間、動かなくなったらおしまいだよ。たくさん動くから、生きていれるんだよ。」


編集 2015年12月3日




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