● ナヌマンガ島2008年の日記 5月3日

 

  ー ナヌマンガ島の海 ー


今日の仕事を終えて。
夕方、いつものように、家から道をはさんで向かいの海辺にでる。

ツバルの島はみんな、サンゴでできている。
ここナヌマンガ島の海辺は、
一面、真っ白い小さなサンゴ石。
見わたすかぎり青い海と、純白の浜。

その真珠のような玉砂利の海辺が、
毎日、夕日でオレンジ色に染まる。

真っ赤に照り返される波のまにまに、
子ども達がはねる。
キラキラとした逆光の中、こっちに手を振る。
家族の5歳のラウパーマ、お隣のカシ。
8歳のキタヒは釣竿を投げている。
「釣れた?」
「小さいルポが来るよ。」



わたしは毎夕、この海辺に来る。
忙しい作業を終えて
地球につつまれに来る。
すべてをすっかり、洗い流しに来る。
一番深い底の自分に戻りに来る。


3年前、
この広い玉砂利の
海辺に来たとき。

生まれてはじめて
全身が周りに溶けていく
そんな不思議な
感覚に襲われた。

「なにも、
なぁんにも、
いらない。」

そう感じた。

ここに来るために、
今までずっと
生きてきたのだと
思った。



その後日本に帰っても。
このナヌマンガ島の
海辺が
恋しくて
ただ恋しくて
胸が締めつけられた。

いつでも 
どこでも
何があっても
わたしの身体の奥に
この海がある。

わたしの魂は
そこに帰る。

からだの奥で響く
果てしない波。
強烈な潮の匂い。

白い玉砂利の
きゅっ、きゅっという
濡れた音。

それがわたしだ。     





2005年5月6日 まだ4歳の夢さんと。




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